滋賀人のシガリズム Vol.2

レンズの先に、
滋賀の原風景を探し求めて。

山崎千恵(インスタグラマー)

#大津カメラ女子」として、一眼レフカメラを片手にさまざまなスポットを渡り歩き、滋賀の写真を撮り続ける山崎千恵さん。カメラに目覚めたきっかけや、お気に入りのフォトスポットについてお伺いしました。

〈前編〉


私は生まれも育ちも大津市。就職・結婚・子育てと忙しく人生を送る中で、あまり出かけることがありませんでした。でも、2017年に思いつきで、びわ湖大津観光協会が主催する「大津の魅力を撮る!カメラ女子ツアー」という撮影イベントに参加したのを機に、カメラに夢中になったんです。そこで知り合ったメンバーと声を掛けあって「#大津カメラ女子」を結成し、滋賀県内の色々なところに撮影に出向くようになりました。

活動を始める以前は、カメラを撮るのは子どもの運動会のときぐらい。でも今では、お気に入りの一眼レフカメラ2台を使い分けながら、どこかに出かけるときは必ずカメラをカバンの中に入れていくようにしています。それに、撮影に行った先々でも新しいカメラ仲間と知り合うことができ、情報交換したりアドバイスしあったりする仲に。SNSに投稿した写真にも、滋賀県内外の方からコメントをいただいて、交流の輪が一気に広がったと思いますね。


自分が生まれ育った大津市の知られざる魅力とも出会えました。それは、「北比良」という地区。「大津の魅力を撮る!カメラ女子ツアー」で初めて訪れるまでは、地名は聞いたことがあったのですが、どんなところか全くイメージがありませんでした。滋賀県内の中では比較的、都会といえる大津市にありながら、比良山系と琵琶湖にはさまれた別荘地で緑が豊か。散策しながら一軒一軒のお宅を眺めてみると、どちらも個性的で住む人のこだわりがつまっています。それに住民のほとんどが地元ではなく、大阪や京都などから移住してきた方だからか、他の地区にない独特の空気があるんです。

北比良には住居以外にも、ユニークなお店や工房、ギャラリーがぽつぽつとあって、「TREES GENERAL STORE」もその中のひとつ。滋賀県出身の店主・木村さんが約15年前に家と庭をDIYで作り、ハンモックや雑貨、観葉植物などを取り扱うセレクトショップをされています。イメージは、自然と調和することを大切にしたお店だそうで、外観も内観もとてもオシャレです。不定期で店奥にあるウッドデッキでワンデイカフェをオープンしたり、季節の野草の染物教室やビーチクリーンイベントなども開催していて、パートナーのエミさんによるタイ式セラピーとルーシーダットン教室も人気なんですよ。


和食器セレクトショップ「flatto」も、私のお気に入りのお店。ご夫婦2人で営まれていて、作家による陶器や磁器、ガラスなどの和食器を販売されています。どの器も思わず連れて帰りたくなる素敵なものばかりで、娘とも何度か立ち寄らせてもらっています。ここの店主は京都から移住されてきた方で、住居兼店舗の物件を探す中で北比良のもつ空気にピンとこられたそうです。今は、この地区の魅力を発信するためのWEBサイトも、地域の方々と協力しながら制作されているそうですよ。

2つのお店以外にも、週イチや月イチしかオープンしないコーヒー豆の焙煎所やピザ屋など、自分の「好き」を自由に楽しむ暮らしをされる方がたくさんいらっしゃいます。それに、お店をされていない方も、私が「庭のお花を撮影してもよいですか?」と声をかけると、「どうぞ」とやさしく招き入れてくださって、そんなオープンな空気も私がこの地区に惹かれる理由なのかもしれません。

〈後編〉


私は大津市に住んでいるので、普段の活動範囲は大津周辺が多いです。でも、たまに少し遠出をして、カメラ仲間と出かけたりもします。そのひとつが、高島市にある「海津大崎」です。桜が有名な景勝地で、カメラを始める前は家族を連れて花見をしにいっていましたね。

写真提供:びわ湖高島観光協会

毎年春になると、花見のための船も出るぐらい、人でいっぱいになります。その時期の景色はもちろんとても綺麗なんですが、私は春以外の海津大崎のほうが実は好きです。人も少なくひっそりとしていて、歩いているのは釣り人ぐらい。このあたりは、滋賀の昔ながらの自然が色濃く残っているところで、同じ滋賀県なのに小旅行にやってきたような非日常の世界観を味わうことができます。

写真提供:びわ湖高島観光協会 ※ライトアップは行っていません。

それに、高島市はメタセコイア並木も有名です。ここは紅葉の時期になると、人や車でごったがえします。でも、私がおすすめしたいのは、夜の景色。高島って、星がとてもきれいに見える場所なんです。人通りはないですし、昼間は主役だったメタセコイア並木が、夜になると星空を引き立てるシルエットとして姿を変えとても美しいです。私はそんな風に、いわゆる“映え”を狙うよりも、みんなが気づかずに通りすぎてしまうところに良さを見つけて、レンズを向けたいと思っています。


東近江のエリアも好きですね。琵琶湖にある唯一の有人島の沖島は、私が幼い頃に見た、まだそこまで発展していなかった大津の原風景を思い出させてくれます。沖島には、車も走っていなくて、地元の高齢の女性たちが、三輪自転車に採れた野菜なんかを載せて移動しているんです。道には、信号だってありません(笑)ここは、時が止まっているというか、私たちが普段暮らしているところと時間の流れがまったく違うんですよね。沖島のゆったりした暮らしのリズムが私には合っていて、だから心が落ち着くのかもしれません。

写真:山崎千恵

カメラを始めてみて、周囲を見る視点は大きく変わりました。どこかに出かけても、見るものすべてを被写体として考えてしまいます。だから、今まで見えてこなかったものが見えてきたりもして。私はこれからも、自分なりの心のレンズでマイペースに、滋賀の知られざる魅力をどんどん見つけて、写真を撮り続けていきたいですね。

懐かしさを感じさせたり、夢のような雰囲気のある写真が好きな山崎さんは、最近オールドレンズでの撮影も始められたようです。自分のリズムや、心のレンズに合わせて、滋賀をきりとる。これが滋賀人、山崎さんならではのカメラの楽しみ方のようです。

山崎千恵(インスタグラマー)

滋賀県在住。“観光大使”になったつもりで大津の魅力発信をする「大津カメラ女子」。
「#大津カメラ女子」というハッシュタグをつけてインスタグラムに投稿したり、びわ湖大津館で写真展を行うなど、大津を中心に滋賀の新たな魅力を発信している。
https://www.instagram.com/ruku.nyan/